スタプリの名悪役「カッパード様」の魅力について ※1/26最終回後追記
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
さて皆さん、1月の風物詩といえば、何を思い浮かべるでしょうか?
うんうん、そうですね。勿論プリキュアの最終回シーズンですよね。
世間では次世代である『ヒーリングっど』の情報が解禁され例年通り賑わいでいるところですが、一方で現行シリーズがどこか過去のものになった気がして切なくなる季節でもあります。
そんな訳で、今回は今佳境を迎えている現行シリーズ『スタートゥインクルプリキュア』、通称スタプリの記事を書いていきたいと思います。
今更?むしろ今だから書くんですね。
皆さんはスタプリの中で、誰が一番好きですか?
主人公のスター? 王道を行くミルキー?
ボクとしてはみんな好きなので、こういう質問をされると頭を抱えてしまいます。
だけども、一番と言われてしまうとやっぱり……
カッパード様ですね!
1話から登場し、今日に至るまでノットレイダーの幹部として活躍しているカッパード様。
特にキュアスターこと星奈ひかるさんとは因縁深く描かれ、
去年末放送の第45話は、それはもう涙なしには見られないものでした。
終始存在感を放ち続けるこの男の魅力を、
今回は皆さんにも是非伝えていきたい所存です。
1.あまりに完成された「キャラクターデザイン」。
カッパード様の魅力を語るうえで何よりも避けて通れないのは、
その容姿の妙にあるでしょう。
キザでナルシストな性格を裏付ける整った顔立ち。
切れ長の眼光と長く流麗な鼻、チャーミングな青色の唇は
男の色気をむんむんに漂わせていますし、
オレンジ色のゴーグル?とスマートな立ち居振る舞いからは、
どこかインテリ風な面影さえ感じさせます。
おまけに声はあの団長細谷さんが担当しており、
これはもう誰もが認めるイケメンでしょう。
こうして特徴をあげると、どこぞの深夜アニメに居そうな俺様タイプの王道キャラといった様相を呈しています。
しかしただ一つ、他のイケメンとは一線を画す決定的な違いがあります。
そう……
彼がカッパだということです。
創作上のメタ的な話をすると、カッパというのはまぁキャラとして使いづらい存在の一つなのです。
特に擬人化キャラとしては滅法使いづらいはずです。
理由に関してはお察しの通り、頭の上にお皿という独特すぎるビジュアルが主な原因です。
そのためカッパのキャラクターというと、多くはマスコット路線か、はたまた原典に倣い妖怪として描き出すのが常です。
『カッパのカッピー』や 『はなかっぱ』、最近では『さらざんまい』……
思い返してみても、カッパ(またはモチーフにした)キャラはほとんどがマスコットとして描かれているように思われます。
同じプリキュアシリーズの中でも、何回かカッパは登場しています。
前作の『HUGっと』でも少し出てきましたが、やっぱりチャーミングな小動物として表現されています。
あるいは、もうカッパのイメージガン無視でイケメンに振り切るパターンでしょうか。
『最遊記』シリーズに出てくる沙悟浄は、元ネタのイメージに反してもはやただのイケメンです。
(そもそも『西遊記』の沙悟浄はカッパではない、という反論はあるでしょうが)
かように、カッパキャラというものはどうしても容姿面に難儀さを抱えており、
カッパとしての特徴を残そうとすれば、どうしても見た目が格好よくは描けないというジレンマがありました。
それはさておきいつみてもかっこいいなこいつ。
そこで出てくるのが、カッパード様なのです。
ご覧ください
この見事なまでの頭頂部のお皿を!
そこから妖艶に伸びる髪を!
逞しく背中を支える立派な甲羅を!
カッパード様は、カッパというモチーフを
むしろ前面に主張しているのです!
そしてその上で、「イケメン」で在り続けているのです!
カッパなのに、イケメン。
イケメンなのに、カッパ。
これまで背反していた二つの要素が、
見事に調和されているではありませんか!
そして何より素晴らしいのは、このキャラクターが「プリキュアの登場人物」であるという点です。
もっというと、「女児向けアニメの登場人物である」。ここが最重要です。
……そう、つまりカッパード様というキャラクターは
ともすれば鼻持ちならないキザキャラでありながら、
カッパのコミカルなビジュアルと融合させることで、
女児アニメらしい砕けたキャッチーな三枚目キャラへと昇華されているのです。
だからこそ彼のナルシシズムな言動には嫌味を全く感じることはありませんし、
それどころか「かっこつけ」の一つ一つが良い意味で印象に残ります。
この数学的機能美すら感じさせるキャラ造形を見たとき、
ボクはいたく感動してしまいました。
擬人化キャラの新たな領域を見たような、そんな気さえしているのです。
↑カッパとして誇りのある彼だからこそ、光る皿が映える。
こういう描写が嫌味なく、自然にできるのは本当にすごいことですよね。
ノットレイダーの中には他にも、天狗×美女のテンジョー。一つ目族のアイワーン。鬼がモチーフのガルオウガ様と、どれも強烈な個性を持つ異星人が登場します。
どのキャラも大変魅力的ではありますが、その中でもカッパード様は、
唯一元ネタとなった動物とのイメージが乖離していることがわかると思います。
(例えばテンジョーの場合、天狗=高飛車というイメージを体現しています)
その点からも、カッパード様の持つ個制が唯一無二の魅力であることがわかって頂けるのではないでしょうか。
2.キザな性格の中に隠れる、気高さと慈愛
これまで、カッパード様のビジュアルについて散々触れてきましたが、
では内面はどうなのかといいますと、これまたとても魅力的なキャラクターをしています。
それを探るためには、彼の生い立ちについて今一度触れておかなければならないでしょう。
ノットレイダー達は全員が、故郷の星を追われた“逸れ者”たちのコミュニティです。
皆様々な理由で居場所を失くしていますが、中でもカッパード様の過去はかなり悲惨な内容。
豊かな資源を異星人にも分け隔てなく与え続けた結果、
その異星人たちに裏切られ、侵略された挙げ句に
資源全てを枯渇させられたという衝撃のものでした。
彼らの底しれぬ悪意を見た、当時まだ幼かったカッパード様が、
一体何を感じたのかは火を見るより明らかでしょう。
カッパード様のやや強すぎるくらいのナルシシズムもまた、
このトラウマに起因しており、
即ち他者への強い猜疑心の裏返しであることは容易に想像できます。
毎回敗走させられることになるのですが、
それでも凹むどころか、毎回「武器の調子が悪い」と
何故か自信満々に去っていきます。
この全く根拠のない自信とポジティブさもまた、
過酷な運命から自分を守るための防衛本能であると考えてしまうと、
ひどく切なくなってしまいます。
しかもその上、技名が「カッパードストライク」。なんですよ。
技名に自分の名前をつけちゃうなんてところはまさに、
時が止まったままの幼児性が顕れていてもう最高じゃないですか。
さて、そんな苛烈な人生を歩んできたが故に、
他者を信じず見下しながら生きてきたカッパード様。
上司でもあるダークネストとガルオウガにこそへりくだっていますが、
同僚と思われるテンジョーやアイワーンに対しては冷徹な態度をとります。
例えば第3話。
テンジョウ初登場回では、初っ端「お前には無理だ」と野次を飛ばしていましたし、
第21話で、アイワーンが一度ダークネストの贄にされた時には、彼女の安全を歯牙にもかけませんでした。
しかし一方では、一度脱落しかけたアイワーンに戻ってくるよう促したり、
31話では宇宙空間で呼吸ができなくなったガルオウガの身を案じたり、
最近ではダークネストに異空間転送されたテンジョウを気に掛けるシーンもありました。
これらを単純に「ノットレイダーの戦力を減らさないため」だったり「上司へのビジネスラックな気遣い」だったり、「もう後がなく焦ってるだけ」であるとドライに切り捨てることもできるでしょうが、
ボクはこれらの反応に、カッパード様の本質が隠れている気がしています。
経緯こそ明らかにされていませんが、
幼くして居場所を失ったカッパード様にとって、
その成長過程の多くをノットレイダーとして過ごしたと推測されます。
同じ境遇と目的を持ち、決して少なくない時間を共にした同胞たちにはそれなりに思うところもあったはずです。
異星人に裏切られ故郷を失ったカッパード様ですが、それでも決して他者に対して非情になりきれない。そんな理性と善性が、彼の根底には宿っているのではないでしょうか。
だからこそ、ララとクラスメイトとの交流に動揺し、ひかるの「貴方のことも知りたい」という言葉に希望を抱いたのです。
他者から干渉されまいと必死で築いてきた心の壁。
望まずして強く孤独に生きざるを得なかった男の苦悩と、
その深奥でほんの微かに残った他者を貴ぶ慈愛。
それこそが、カッパード様をより魅力的なヴィランへと昇華していますね。
うん、これは推せる。
3.(物理的に)“水も滴る”いい男
さて、ここまでで全国のスタプリ視聴者の皆様は、
カッパード様がいかに優れた記号性と、分厚いカッパ性を持つ男であるかに気づき、
とくとすえ!ごっこに夢中になっている頃かと存じます。
字幕だと全部ひらがなでかわいい
しかしここはダメ押しに、今度は一戦士としてのカッパード様の魅力についても掘り下げていきたいと思います。
ノットレイダーの幹部4人は、戦闘スタイルがわかりやすく分かれています。
手下を使うテンジョウ
メカニックを使うアイワーン
己の肉体で1対1で戦うガルオウガ
といった具合です。
では我らがカッパード様はどうかと言うと、
御存知の通り武器を使って戦います。
屈強な「鬼」であるガルオウガ様と比べて、カッパであるカッパード様が武器を用いることは合理的です。
水の多いところではパワーアップするという、単純にして明快な設定も素晴らしく、
水を自在に操る攻撃の数々はこれまた豪快でかっこいいんです。
第45話のキュアスター戦で放った特大元気玉カッパードストライク。
作画と演出、カメラワークもあってクッソかっこいいのです。
カッパというイメージを利用して、「水陸宇宙両用」という設定を違和感なく受け入れさせているところもまたクールです。
カッパというモチーフが、彼が戦い活躍する舞台に違和感なく溶け込んでいますし、
武器を振るう戦士という戦闘スタイルの説得力にもなっています。
加えて、彼の故郷同様に恵まれた資源のある地球を、いたずらに傷つけようとしない戦い方もまた、よくできています。
渾然一体とはまさにこのことでは?
そしてカッパード様は戦いが好きな武人としても掘り下げられています。
ときには、フワを奪うという目的以上に戦闘を優先してしまう程度には好戦的です。
毎回楽しそうに戦って、そして捨て台詞を残して去っていくカッパード様、とても癒やされますね。
とはいえ基本的にはノットレイダーとしての責務が第一であり、
当然他者の弱みにつけこんで歪んだイマジネーションを顕現させますし、
2年3組のクラスメイトを扇動してねっとり外堀を埋めたりと、
目的のためなら狡猾な手段を講じることも厭わない冷酷さも兼ね備えています。
基より私情で戦うことがほとんどないカッパード様ですが、
しかし第45話でのキュアスター戦は例外です。
ここでは明確にキュアスターとの因縁に決着をつけるという私怨で動いており、
これまでは手下のノットレイ達を率いて集団戦を繰り広げていたカッパード様が、
スターと明確な一騎打ちを挑んだ回となります。
「ノットレイダーのカッパード」ではなく、
「個人としてのカッパード」として見せた騎士道精神。
戦いの中でもがき、答えを探そうとするその姿勢。
そこには、彼元来の誠実さが垣間見えてしまい、
そういう点からのこのエピソードは尊さで涙せざるを得ないワケなんです。
第21話で、アイワーンがダークネストに乗っ取られた際、
「思考を止め力を得たアイワーンの姿に昂ぶるシーン」は、
今にして思うと胸を締め付けられざるを得ません。
カッパード様に限った話ではありませんが、
ノットレイダー達の悲願は、「自分の居場所を獲得すること」なのですよね。
もしカッパード様の星が侵略されることなく、
一人の真面目な青年として健康的に育っていたならば……
銀河に瞬くカリスマモデルとか……
もしかしたら、星空連合の一員として宇宙を守る側の騎士になっていたのかもしれませんね。
そう考えると、ひどくやるせない。
あるいはファンサービスが好きなデュエリストになっていたかもしれない
まとめ
ここまで長々と書いてきましたが、ここまでカッパード様の魅力を
・イケメン×カッパというミスマッチが起こす絶妙なビジュアル
・その性格を裏付ける明確なバックボーン
・戦闘スタイルにまで現れるキャラ設計のディティール
という3点から書かせて頂きました。
もっと簡単にまとめると、
全ての要素が機能的に高次元でまとめられた名キャラクター、それこそがカッパード様なのです。
この最高に刺激的な魅力の一端でも伝えられていれば、ボクは幸いです。
そんなこんなで、放送も残り数話となりました。
スタプリという作品の影でジメジメと照り輝く最高の悪役に、今一度注目されてみるのはいかがでしょうか?
そして……
来る先週放送の第46ダークネストの恐るべき目的と正体が明らかになりました。
そして、テンジョウ、ガルオウガ、そしてカッパード様の歪んだイマジネーションは利用され、バーサーカー化してしまいましたが……キュアスター達の渾身の力でついに浄化されました!
深い闇の中でついに救いの光を見つけたカッパード様。本当に良かった…
そして次回、いよいよ共闘へ!
意識を取り戻したカッパード様が、どう動き、そしてどう変わっていくのか。
物語もいよいよ最終盤。
プリキュア達と蛇遣い座の女神の最終決戦。
そして、その傍らで確かに生き様を刻んだヴィランズ達。
その全員の行く末を、しかと見届けていきましょう!
なお、ボクは最後までリアタイできそうにありません。
何やってんだ団長ォ!
では、また。
1/26追記
1年間の放送が今日ついに完結しました。
蛇遣い座のプリンセスとの最終決戦。そしてプリキュア達を認め共闘したノットレイダー達の軌跡……色々なことがありましたが、これにて無事終幕となりました。
例によって大人になったプリキュア達の後日譚が描かれ、みんな大人になった姿(アイワーンは特に衝撃的だった)がお披露目。
そんな中で、ダークネストという基盤を失ったノットレイダー達は果たしてどうなったのか……
そこには、彼らだけの星を見つけ、異種族同士でチームを築き発展を遂げた姿がありました。
それぞれが母星を迫害され、容姿も特徴も全く異なる人々。
ダークネストの陰謀により、最初は、望まずして寄せ集められたコミュニティだったけれど、気付いたらそこが彼らの立派な居場所になっていたのですね……。
そして最後のカッパード様のイケメンスマイル!
1年通して、しみじみビジュアルの秀逸さに惚れ惚れしてしまいます。
この素晴らしいキャラクターに出会えたことに、感謝を。
ていうか、全然老けてないなここの3人。
敵対していた者にも救いがある。やっぱりプリキュアは最高やな!
最後に、スタッフ・キャストの皆さん、一年間お疲れさまでした。
そして次は、『ヒーリングッど』で会いましょう。
アニメ女児アニメだけあればいいわ……
では、また。