【第9話】ワルブレを10年見続けた男による各話解説【10周年記念】
「 雷 帝 万 歳 ! 」
そう、我々にとっての雷帝とは、つまりディオメディアのことであり、
10年以上も語り継がれる奇作にして傑作を生み落とした事実には、
まさに万歳三唱せざるを得ないだろう。
そういうワケで、TVアニメ『聖剣使いの禁呪詠唱』の放送開始10周年を記念し、
この10年間毎週ワルブレを見続けてきた筆者が、
改めて本作の魅力を、毎月1話ずつ綴っていく企画となります。
今回はとうとう終盤へ突入!
第9話「シベリア行(こう)-Lonely Soldier-」について解説していきます。
ロシアとの戦争という、今のご時世だと洒落にならない展開。
何より、禁呪VS禁呪の前哨戦という立ち位置でありながら、
それだけでは終わらない、注目ポイント抜群の演出が盛り沢山となっている。
放送3ヶ月目に入り、尚も収まる気配のないどころか、
ますます深まる本作の魅力を、今回も綴っていこう。
1.”超”最強の言語疎通
さて、第9話を語る上でまず欠かせないものといえば、
やはり言語翻訳に関する事象だろう。
放送当時も、散々話題になったのだが、
改めて振り返ってみよう。
まずはアバン。
ロシアに乗り込んだ諸葉さんは、ロシアのウラジオストク分局長、ベルナルトと接敵する。

ロシア語を使うベルナルトに対し、諸葉さんは翻訳アプリを使って自らの戦意を表明。
ここまでは良い。
そしてOP、CMと挟んでAパート。
敗北したベルナルトを拘束し拷問をする場面になり……

なぜだか急に翻訳なしで普通に会話が通じている。
……まぁ、正直なところだ。
アニメにおいて、異国の人と普通に会話が通じてるなんてことは珍しくない。
むしろ、翻訳に関してわざわざ表現するアニメの方が、レアだ。
なので、諸葉さんとベルナルトが普通に会話が通じる。別にそれそのものに違和感はない。

じゃあ、アバンで入れた翻訳アプリのくだりはなんだったんだよ!?!?
アレがなければ、会話問題は普通にスルーしてたぞ!?!?
わざわざあんなシーンを挿入したせいで、おかしなことになってるじゃないか!!!
CMの間にディープラーニングでもしたのか????
もはや毎記事の恒例となりつつある、ワルブレ特有の最高演出。
今回も無事、“炸裂”してしまったようだ。

しかもBパートに至っては、ついに関西弁まで登場し始める。
もうめちゃくちゃだよ。
一応、念の為に補足しておくが、
原作においては、会話が通じるシーンはすべて英語で話しているという設定になっている。
アバンで翻訳アプリを取り出したのは、
この時ベルナルトが英語ではなくロシア語を使用していたからで、
Aパート以降は英語で会話が繰り広げられているという点は頭に入れて頂きたい。
というより、ストライカーズの面々は、皆英語が使える。
そう、あの嵐城でさえ、ネイティブな英語で喋っている。
実際、3~4話で登場したエドワードとの会話は、原作だとすべて英語なのだ。
たとえアニメになってエドワードが日本語を使っている設定に変更されたとしても、
あまつさえ嵐城の英語力が「めいあいへるぷゆー?」レベルだったとしても、
それはそれとして、英語は堪能なのだ。そのはずである。
また、カティアが使う関西弁については、ばりばりのジャパニーズ関西弁なのだが、
彼女が日本人のハーフであることがきちんと言及されていて、おかしくはない。
そう、特段ムジュンはしてないのだ。
ここはきちんと覚えて帰っておいてほしい。
2.諸葉さんのケータイ事情
そしてもう一つ、注目したい部分がある。
そう、諸葉さんの持っているスマートフォンについてだ。


翻訳を行う際に、赤いスマホを取り出すのだが、
以前の記事でも何度か触れた通り、諸葉さんはスマホではなくガラケー派のはずである。
そんな彼が、何故スマホを持参していたのか?
ちょっと見ない間に機種変した?
いいや、倹約主義の諸葉さんが、わざわざ買い替えるとは考えづらい。
改めて言っておくが、原作にわざわざ翻訳アプリを使うシーンなどない。
故にもちろん、諸葉さんの携帯事情に関する情報も記載されていない。
なので、ここからは完全に推論になってしまうが、
結論を述べると、このスマホの正体は、
恐らく漆原家からの借り物だと考えられる。
当初は、アンジェラが貸し出したものではないかと推測していた。
ご覧の通り、諸葉さんが取り出したスマホは赤い柄をしている。
かなり派手だし結構珍しい色だ。

そして一方、アンジェラが使うケータイ。
こちらも赤い色である描写がなされている。
ただ、彼女がメインで使っている端末もガラケーであり、スマホではない。
とはいえ、この目立つ配色を愛用していることは間違いない。
また、性格的に考えても予備用の端末を持っている可能性は十分考えられるし、
そうでなくても、諸葉の案内に備えて用意してきた線もある。
これらの根拠から、アンジェラさんから貸し出されたものである
………という持論を長らく持っていた。
だが、第11話にてある衝撃のワンシーンが映る。

ご丁寧にひらがなで名前が書いてあり、
少なくともアンジェラ端末である線は消えたことになる。
では結局、諸葉さんがガラケーからスマホに新調したのか?とも思うが、
筆者としてはやはり、あまり推したい説ではない。
もちろん内心的な理由もあるが、ちゃんと根拠もある。
1つ目は、スマホに変わったタイミング。
第7話にてレーシャとデートしている際には、確実にガラケーを所有しており、
もしスマホに機種変したのだとすれば、
ロシアへ戦争を仕掛けにいくまでの期間に行ったこととなる。
このような一刻を争うタイミングでわざわざ自分からスマホに変更したとは思えず、
やはり誰かに連絡用として貸出されていることはほぼ間違いないだろう。
2つ目は、アンドウの番号から着信があるということ。
少なくともこれまでの話の中で、諸葉さんとアンドウが接触した様子はなく、
ましてや番号を交換するような描写など皆無だ。
ランクSとして、どこかのタイミングで連絡先を共有されていたという可能性はゼロではないが、
どうしても違和感が拭えない。
3つ目は、エドワードからではなくアンドウからの連絡が入っているという点だ。
エドワードとは第5話にて、直接連絡を取っているシーンがあり、
このことから諸葉さんとエドワードは、
(恐らく一方的に押し切られる形で)連絡先を交換していることは事実。
着信内容として、ロシアにメタフィジカルが現れたという報告となるのだが、
ほとんど面識のないアンドウより、一緒に日本支部に居たエドワードの方が連絡をしそうなものである。
まぁこのあたりは、諸葉さんにとってアンドウは直属の上司のようなものであるし、
日本支部として筋を通すという意味なら、全く不自然ではないが。
いずれにしても、これらのような理由から、
諸葉さんの持つスマホは本人のものではないと推察している。
では、アンドウの連絡先が登録されている端末の所有者は誰か……と考えると、
白騎士機関または学園、あるいは太いパイプを持つ漆原家のいずれかと考えることが自然ではないだろうか。

そして個人的には、漆原家のものであるといいなと考えている。
現に、第4話などに見られる静乃のスマホの画面と共通のUIが見て取れるし、
何より、ロシアへ行く諸葉さんに持たせてくれそうな気配りをするのは、
やはり静乃だろうと思うからだ。
ちなみに余談だが、エドワードのスマホ事情はどうなのかというと、
第8話の終盤にて画面ががっつり描かれる。

具体的な端末まではわからないが、
このタイル状のUI配置は、今はなき「Windows Phone」の特徴だ。
故に、エドワードはWindows Phoneの愛好者ではないかと睨んでいる。
もうサポート終了しちゃったけど…まぁ気楽に行こう(Let’s be frank)。
3.ぜひ入れてほしかったシーン
さて、このロシア侵攻編では、原作において一つおもしろい戦闘が存在する。
ベルナルトを倒した後、ハバロフスク支部長ブラートとのバトル。
この戦いで、大変にアニメ映えするシーンが存在するのだ。
なんと、足で綴るのである。
当時映像として流れれれば激バズ確定。
恐らく円盤は5万を超え、覇権アニメ待ったなしであろうが………

何故かアニメでは全カットされてしまった。
いや、絶対見たかったよなぁ??
どうしてなかったのかを考えると、
まずはテンポの問題。
それと、作画リソースの問題の2点と言ったところだろうか。
ブラートは、数多く居る支部長の一人であり、
ここを描く場合、単純に他の戦闘の尺も追加しなければならない。
ブラートは正直、ただの一介のモブに過ぎないし、
テンポ感も、ストーリーのつながり的にも、いれる必要のない戦闘だろう。
しかしだからこそ、入れてほしかったという思いは正直ある。
何分、第8話の記事で紹介したサイクルモノレールモブに見られるように、
特に必要性のない外連味は、本作の面白さの一つだからである。
仮にブラート戦を丸々カットするにしても、
例えばベルナルト戦や、1VS9の戦いの時にこっそり輸入してくれるぐらいのことはどうしても望んでしまう。
作画リソース的に厳しかったのかと言われればそれはそうかもしれんが。
ちなみに、途中で諸葉さんたちの進路が地図上に描かれるが、
これはロシアを横断する実在のシベリア鉄道の進路と合致する。
実際、原作においても、空港からウラジオストクまで高速鉄道を使った後、
このシベリア鉄道に乗って移動していることが明記されている。

通称ワルブレトレインと(ごく一部で)呼ばれ親しまれているこの列車の正体は、
まさしくシベリア鉄道がモデルなのだ。
シベリア鉄道によるワルブレ聖地巡礼……これが筆者の密かな人生の目標である。
4.諸葉さんの戦争メソッド
さて、この話では諸葉さんが単身ロシアに戦争を仕掛けにいくところが肝である。
ちなみに、ワルブレはなぜか地上波で再放送されていないが、
恐らく現代においてはロシアとの戦争部分がセンシティブ要素に引っかかっていることが原因であると考えられている。
そんな中で、ワルブレトレインに乗りながら、
各地の分局長を次々潰していくことになるのだが、
諸葉さんのポリシーとして「一人も殺さない戦争」を掲げている。
さきに倒したベルナルトも、拷問時に暗黒デススマイルを浮かべてはいたものの、
実際に処したのは雷帝であった。
そんな訳で、電車のルートに伴って分局長を次々始末していくダイジェストが流れていくのだが……。

正直この辺とか、一人くらい死人出てないか??
画面に映ってないだけで、名もなきモブが何人か犠牲になっていてもおかしくない豪快さである。
ただ、ワルブレは画面に映らないものは存在しないし、
本人がそうと申告すればそうなるという特性があるため、
死んでいないということなのかもしれない。
本人がそうと申告すればそうなる好例として、第8話でのサツキVSソフィー先輩の一幕が顕著だ。
諸葉さんの元に駆けつけようとする静乃を止めるため、立ちはだかるソフィー先輩。
それに対し、サツキが神足通によって即座に前に立ち、食い止めるシーン。
ソフィー先輩の「速い…!」というセリフによって、
サツキがソフィー先輩の予想を上回る速度で動いたことがわかる。

だが、実際にアニメーションを見てみると、別に言うほど速くない。
まぁ、これまでの通例として、分身が残る=速いという表現に徹していたのだから、
このシーンも速いことは間違いないのだが、
しかし実際の見た目として、この僅かな距離を移動したことを考えると、
いささか間がありすぎているように感じる。
しかし、そんな意図的なのか違うのかわからない速度表現についても、
直後のソフィー先輩による「速い…!」というセリフによって、
確かに速い表現だったのだという事実が補強されている。
これがちょうど1話前のお話だったことも踏まえて考えると、
今回のロシア各支部制圧編における不殺宣言と、
実態があっていないように見える映像との微妙な不和も解消される。
「アイツ、本当に成し遂げやがった…一人も殺さない戦争を」
これは第10話での発言になるが、
上記のセリフを以て、まさしく諸葉さんが不殺を貫いたことが事実であると証明されるメソッドだ。
なるほど、実に奥深いな。
そして余談だが、今回の諸葉さんは、
全体的に戦いそのものを楽しんでいるようなシーンが数多く見受けられる。


ベルナルト拷問シーンで浮かべたデススマイルもそうであるし、
キルサンと空中戦を繰り広げている時もまた同様だ。
アニメではあまり描かれなかった部分だったが、
本来の諸葉さんは、目的のためなら殺戮をも厭わない修羅であり、
そんな彼の残酷な一面というものが、言外の表現をもってよく表現されている回でもあろう。
時々こういうゾッとするような演出が入るねこのアニメ。
5.「文字」による遊び
さて、ここで第9話のテーマについて考察してみよう。
本作にとって初の海外進出、ガバ 翻訳周りの言語の壁。
その辺りも踏まえて考えると、やはり今回のポイントはズバリ「文字」であろう。
そもそも、サブタイトルの『シベリア行(こう)』の時点で、
文字による遊びがとてもよく顕されている。
『シベリア行』自体は、原作での章と全く同じ名前から引用されているのだが、
行を「いき」ではなく「こう」と呼ばせることによって、
独自の香ばしさが突然漂ってくるのだから凄まじい。
何より、『行(こう)』と書くことで、
そのまま『行こう』という意思表示の動詞とかかっているところが、
もう実に今作らしいウィットの富み方だ。JRも涙目であろう。
なんやねん、シベリア行こうて。
そしてまた、冒頭でも文字演出に関するこだわりが提示されている。
それが、最初に表示される「ロシア・ウラジオストク」の地名テロップだ。

ご覧の通り、何故かTV放送版とリテイク版で、テロップの位置が変更されている。
……なにゆえ?
なんの意味があるんだ、これに??
時折、意図がよくわからない修正を加えてくるワルブレだが、
これに関しては本当に意図がよくわからない。
放送版の位置だと、何かこう、視点誘導的に問題があるとか、そんなところか?
他に気にする所があるのではないか?
そしてそこから繰り広げられるのが、先に上げた「翻訳アプリ」のくだりだ。
ここでもやはり、「文字」が重要な要素になっている。
音声でもなく、言葉でもなく、「文字」。
冒頭の間にこれほどの文字に関する印象的なシーンが続いている……。
やはりこのエピソードは、何か「文字」が重要であることを、
暗に物語っている……そう考えることが、妥当であろう。
そして、ワルブレの中で「文字」と言えば、これはもう一つしかない。
そう、闇術の魔法文字だ。
ロシア編、その一番の見どころは、なんといっても二人の禁呪保持者による禁呪合戦。
その前哨戦ともいえる第9話では、諸葉さんに対し雷帝がこれみよがしに実力を披露する構図になっている。
顕著なところでは、ベルナルトの最期だ。
第八闇術、サンダーストームヘリックスにてベルナルトを屠った諸葉さん。
もちろん本人は最初から不殺のため、ある程度手加減をした火力だったのだが、

それに対して雷帝は、一段上の闇術である第九階梯、
サンダーボルト・ドラゴン(通称:原作者も知ってる方のドラゴン2)をぶつけて葬る。
このように、禁呪VS禁呪となる二人の戦いにおいて、
その階梯数、文字というものは超重要な事項となってくる。
そう考えると、序盤にこれほどの文字演出に関する特徴をまとめてお出ししたのは、
「二人の巨大な闇術同士のバトルこそが、この章の注目ポイントですよ」ということを暗に誘導する。
そんな計算された演出になっていたのではないだろうか?

ちなみに、この魔法文字。
期間限定で当時公式からフォントが発売されていた。
この魔法文字、よく見るとひらがなを変形させただけなので、
かな入力をすると画面上へ綴れるという仕組みなのだ。
筆者も二つ前のパソコンに入れていたが、
さすがに今の端末にまで引き継げていない。

もし今もフォントが残っているよという古のセイヴァーがいれば、
ぜひ大切に受け継いでていってほしい。
というか期間限定にしないでもう一度配信してくれんか?
6.ミニコラム⑨:提供
さて、第9話の象徴的なシーンと言えば?
100人中100人がこう答えるだろう。

"提供目"だと。
この通称「雷帝供目」は、近年稀に見るほど完璧な提供目として、当時TL他を大変騒がせた。
ちなみに画像はテレビ東京であり、他の地方局ではどうなっていたのかよくわからない。
テレ東は昔から、隙あらば提供目を作ってくる放送局であると(巷では)有名だ。

恐らく、放送内容を検閲する部署に、提供目ポイントを探っている人物がいるのではないかと思われる。
とはいえ、完璧に決まる作品もそう数は多くなく、
たった12話しか放送していない本作が、
さも当たり前のようにこんな100点満点の提供目をお出ししてきた事実は、
もう流石であるとしか言いようがない。
本編外ですら話題性が多すぎるのだ。
そしてせっかくなので、本作における個人的にお気に入りな他の提供を見ていこうと思う。

まずこちらは、第2話の前提供。
ご覧の通り、「3」の口をしたサツキの口が微妙に動いているシーン。
以前、サツキの扱いは2話にしてすでにひどいという話をしたが、
提供からもその片鱗を感じさせる。
いや……むしろめちゃくちゃ優遇されている、のかもしれない。


続いて、第3話の前提供と後提供
見てくれ、この扱いの差を。
提供だけ見ても、サツキと静乃がどういうヒロインなのか、
ということが端的に見える、面白いシーンの抜粋だと思います。


そして、第7話の前提供。
ご覧の通り、レーシャの鬱だ氏のうのシーンが、
スポンサー表記と一緒に切り替わる。
これはいつぞやの記事でも少し触れた提供だが、
突然現れた怪しい異邦人のレーシャに、
キャッチーな印象を与える役割の一端を担っている。


最後に、これは個人的な好みなのだが、
第1話前提供と、最終話後提供の対比。
まだタイトルロゴ以上の情報がなく、
誰も居ない立派な亜鐘学園の勇壮を臨む簡素な絵の1話に対し、
学園の残骸になりながらも、諸葉さんたちが集合する最後の提供という、
実にエモエモな対比が成立している。
こういうのがいいんだよな。
まとめ
ということで、第9話は、本作の中でも屈指のバトル……の前段階、
なのだが、それだけには収まらない様々な考察ポイントや、
盛り上がりを少しずつ彩る意匠に満ちた、
終盤戦へのゴングを壮大に打ち鳴らすエピソードであった。
同時に、日本から世界へと話が広がり、
ふんだんなアクションパートと、かつて敵だったアンジェラとの絡みなど、
作品自体の広がりを、アニメ・ワルブレらしさを用いて表現した、
名エピソードであったといえる。
そして次回は、いよいよ禁呪VS禁呪。
全12話を通しても、指折りのド派手なバトルであり、
とりわけ映像映えするお話となっているので、期待されたし。
では、また。